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【日南市】S-KYT研修を実施して


日南市消防本部総務課消防団係
松浦 裕一郎

日南市は、宮崎県南部に位置し、伊東氏飫肥(おび)藩の城下町として繁栄した「九州の小京都」と称される飫肥や、風光明媚な日南海岸国定公園などを擁する歴史と自然あふれる観光の街です。東は太平洋の日向灘に面しており、日本海流の影響により温暖な気候で、雨量も豊富です。

災害に関しましては、夏から秋にかけては頻繁に台風が接近し、大きな被害を受けることもあります。また、沿岸部が多いことから、南海トラフ地震の発生が危惧されています。

日南市消防団は、条例定数1,130名(基本団員数:1,080名、機能別団員50名)実員997名(基本団員数:954名、機能別団員43名)、13分団、49部、222班で構成され、「自分たちのまちは、自分たちで守る」という信条をもとに、市民の生命及び財産並びに安心を守るため、年間をとおして様々な活動に取り組んでいます。

当消防団は、消防団活動の基本となる「日南市消防団指針書」を令和4年度に制定しました。指針書に基づく年間訓練計画に沿って訓練を実施しており、代表的なものとして、消防本部主催の消防団幹部研修、年数回行う新入団員研修、移動消防学校、補助事業を活用して遠隔分団に配備している各種救助資器材取扱い救助訓練、そして今回実施した消防団員公務災害防止研修があります。

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ここ数年、新型コロナウイルス感染症により、様々な行動制限を強いられ、各種訓練及び研修、会議、イベント等は中止を余儀なくされ、分団によっては活動がほとんどないことも散見されました。

しかし、令和4年度末ごろになり、「新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを取り戻しつつあること。」「5類感染症に移行すること。」といった状況になったことから、「S-KYT研修」の開催を段階的に計画し、消防団等公務災害補償等共済基金から講師をお招きし、令和5年6月11日に実施することを決定しました。

数ある研修事業の中から、今回「S-KYT研修」を選定した理由は2点あります。一つ目は、コロナ禍回復が見込まれることによる、消防団活動の活性化です。「活性化する=事故率の上昇」が予想されるため、公務による事故防止を目的として具体的な手法でアプローチする本研修は、まさにうってつけの研修であると確信がありました。二つ目は、コミュニケーションをカリキュラムのなかに多く取り入れている本研修に魅力を感じたことです。ここ数年行動制限を強いられてきたことにより、身体的活動はおろか、団員同士が直接対話する機会さえ少なかったことから、本研修を通して「集まって話すことができる。」という純粋な喜びを、各団員に感じ取ってほしかったからです。

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今回、消防団員等公務災害補償共済基金から、講師として村﨑満氏、藤原謙治氏、櫛井正喜氏、葛城惠氏、冨永貞幸氏の5名のS-KYT指導員をお招きし、各分団の部長以上を対象に、消防団員77名が13班に分かれて研修を受講しました。部長階級以上を選定したのは、研修内容を各分団に持ち帰り、フィードバックしてもらいたいという、切な思いがあったからです。

私は主に研修の補助を行っていたのですが、すべての講師の方々に共通して言えることは、消防活動基本中の基本である、大きな声で元気よく話すことがいかに大事なことかを熱意をもち、全身全霊で伝えてくれていたことです。それが今でも強く印象に残っています。最初は、遠慮しがちに講義を受けていた受講生たちが、次第に活発化していき、遠慮なくコミュニケーションをとる姿を見たときに、大きな喜びを感じました。

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本研修の目玉である、4ラウンド法では、班員全員でイラストシートの状況を共有して予想される危険を予知し、その危険を排除するための具体的対策案について討論します。日南市につきましては、山間部の割合が多く、林野火災及びその他火災の割合が多いため、イラストのテーマを「林野火災での放水活動」に設定しました。
①現状把握 → ②本質追及 → ③対策樹立 → ④目標設定
と段階的に実施していくのですが、各班で各受講者が積極的に意見を交わし、後半になると、研修開始時の静けさが嘘のように各参加者がディスカッションしていました。時折、難しい質問等もありましたが、講師の方々は、大変経験豊かな方々ばかりで、消防職員時代の現場活動を例に、具体的かつ的確に安全管理対策例を助言していただきました。

研修終了後、アンケートを拝見しましたが、「もう一度受講したい。」「時間がもう少しあったほうがよい。」などの積極的な意見が多く、研修がいかに意義深く、効果的であったかを確信することができました。

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公務災害のほとんどは、それを予防するという発想を持ち各消防団員の意識を改革することによって防げるものです。本研修の効果が、今後の日南市消防団活動における公務災害防止に寄与することを確信しています。次年度以降も対象を幹部から団員に切替え、可能な限りこの研修を実施していきたいと考えています。

訓練当日(6月11日)は当初雨がかなり降っており、研修が実施できるか心配されましたが、研修開始時間ごろからは雨量も落ち着き、無事に研修を終えることができました。

結びになりますが、研修当日、熱心にご指導いただいたS-KYT指導員の皆さん、研修開催の企画に携わっていただいた消防団員等公務災害補償共済基金企画課の皆さん、本当にありがとうございました。

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