コラム
【大竹市消防団】S-KYT(消防団員危険予知訓練)研修を実施して
大竹市消防本部消防総務課消防総務係
鎌田 康央
大竹市は、広島県西部の山口県境に位置する臨海工業都市です。
かつて幕末の動乱期には、長州戦争の戦禍により沿岸部のほとんどの民家が焼かれた地域です。
昭和に入ると旧日本海軍の海兵団や潜水学校が設けられ、終戦後は南方からの引き揚げ者を受け入れる港となりました。その後、軍用施設跡地に小瀬川の水を利用したパルプ、化学繊維及び石油化学等の企業を誘致し、隣接する山口県岩国市・和木町と一体的に日本で最初の石油化学コンビナートが形成された化学系工場の多いまちです。
一方、山間に目を向けますと、クライミングのメッカとして有名な三倉岳があり、シーズンになると国内のみならず、海外からもクライマーの方が訪れ、賑わいを見せております。
大竹市消防団は1本部・12分団、消防団員265名(令和7年4月1日現在)で構成されています。令和7年4月1日現在の管内の総人口は25,202人、世帯数は12,761世帯で、沿岸部の工業地帯のみならず、島しょ部から山間部まで様々な地域性がある中で災害対応等で活躍しております。
大竹市消防団は、昭和30年に発足し、火災や風水害等の災害時の活動、行方不明者の捜索活動や火災予防広報活動等で常備消防とともに対応にあたっております。また、火災の頻発する年末・年始にかけては、年末特別警戒として市民の火災予防啓発のため、精力的に活動しております。
訓練については、日々の放水訓練、ポンプ運用訓練に加え、春と秋の火災予防運動期間に合わせて出動訓練を行うほか、年に2回全団員を対象に規律訓練を行っております。
大竹市のイベントとしては、毎年実施されている「大竹・和木川まつり花火大会」があります。この花火大会は、広島県大竹市と山口県玖珂郡和木町が合同で開催するもので、約4,000発の花火が打ち上げられ、小瀬川の夜空を彩ります。大竹市内はもちろんのこと、市外や県外からも多くの見物客が訪れ、大変な賑わいをみせる夏の風物詩でありますが、その際にも大竹市消防団が出動し、警戒・警備の要として活動しております。
このように、年間を通じて精力的に活動している消防団ですが、常備消防と異なり、ほとんどの方が他に生業をお持ちであることもあり、消防活動時の危険に対する認識や安全行動に関する知識を養う研修を設ける機会が十分に取れないという課題がありました。過去にもポンプ操法大会に向けた訓練中や、可搬式ポンプを移動させる際にバランスを崩し腰を痛めるなどの公務災害が発生している状況でした。
これらのことから消防団員一人ひとりの危険に対する予知能力を高め、事故を未然に防ぐための研修を行い、安全教育のリーダーを育てていきたいという強い思いを抱き、S-KYT(消防団危険予知訓練)研修に申込みをさせていただきました。
研修申込み後、主任指導員である元広島市消防局長の 山下 聰 指導員から連絡をいただきました。私が担当になって初めてのS-KYT研修であったため、分からないことも多く、不躾な質問をすることもあったかと思うのですが、山下指導員は丁寧に教えてくださり、研修当日までの準備を滞りなく行うことができました。
研修当日には、山下指導員に加え、元広島市消防局安芸消防署長の 石田 圭三 指導員、元高松市消防局三木消防署長の 岡 真一 指導員がお越しになりご指導いただきました。錚々たる顔ぶれであり、くれぐれも失礼がないようにと非常に緊張して当日を迎えました。ただ実際に会ってお話しをすると、とても気さくな方々で、その後は不安や緊張を感じることはなく、研修運営にあたっては大いに助けていただきました。
大竹市消防団員の研修に対する姿勢は真剣そのもので、積極的に行動され、自発的に発言するなど、われわれ常備消防も見習う点が多々ありました。
研修終了後のアンケートでも、「参考になった。」「分かりやすかった。」等の好意的な意見が多く、大変有意義な研修になったものと感じております。今後も消防団の訓練、研修計画に合わせ、継続的に消防団員等公務災害補償等共済基金の公務災害防止研修を開催しようと考えております。
この研修を通じて、危険要因の把握と対策、行動目標を設定することがいかに重要であるかを学びました。今後は受講された団員を中心に、各分団で情報の共有を図り、大竹市消防団が「ゼロ災」でいけるよう努めて参りたいと思います。
最後に、ご協力してくださったすべての関係者の方々に、本研修を無事終えることができたことを改めてご報告いたしますとともに、心より感謝申し上げます。