コラム
【長野県消防協会】消防団員危険予知訓練(S-KYT)研修を実施して
公益財団法人長野県消防協会 事務局長 長谷川 好明
広大な県土と3,000m級の山々に囲まれた長野県は、日本アルプスをはじめとする急峻な山岳地帯と厳しい冬期の寒冷・豪雪環境が大きな特徴です。台風による大雨や山林火災、土砂災害に加え、氷点下における水利凍結や路面凍結など、地域特有の自然災害リスクを常にはらんでいます。こうした地域特性に応えるべく、長野県の消防団は77全市町村に設置され、実員数2万8,221人(令和7年10月1日現在)と全国的に屈強な組織力を誇ります。
長野県は県土の約8割を森林が占める全国有数の森林県です。長野県の消防団は、常備消防のみではカバーしきれない広大なエリアを支えるため、地域密着型の防災活動を展開。特に急峻な地形における山林火災の消火や遭難者の捜索活動、寒冷地特有の装備運用や凍結対策において高い技術とノウハウを有しています。また、古くからの助け合いの精神を背景に、地域住民からの信頼も厚く、近年では女性消防団員や学生消防団員の確保・活躍推進など、組織の活性化にも積極的に取り組んでいます。このように、厳しい自然環境と地域コミュニティを結ぶ、地域防災の不可欠な要です。
長野県消防協会では、消防団員の教養訓練事業の一環として6月6日長野県消防学校において県下副団長を対象に消防団員危険予知訓練(S-KYT)研修を実施いたしました。

近年、多様化・激甚化する災害環境において、活動中の団員自身の安全確保は最優先の課題です。特に長野県特有の急峻な山岳地形や、冬場の厳しい積雪・路面凍結、夜間の現場出動など、現場には常に多くのリスクが潜んでいます。従来の「経験や勘に頼る安全管理」から一歩踏み出し、団員一人ひとりが潜在する危険を自覚的に察知する感性を養ううえで、今回のS-KYT研修は極めて重要な機会となりました。
研修では、実際の現場活動を模したイラストや事例を題材に、「どのような危険が潜んでいるか」「それを回避するためにどう行動すべきか」をグループごとに討議しました。自らの経験を踏まえ真剣に意見を交わし、「自分では気づかなかった視点」を互いに補い合う姿が非常に印象的でした。
危険を個人で抱え込まず、チーム全体で共有して声に出す「指差し呼称」や確認のプロセスは、現場における瞬時の判断力とチームワークの強化に直結すると確信しております。また、参加者からは「普段何気なく行っていた作業の中に、多くのリスクが潜んでいることに気付かされた」「普段からの意思の疎通や確認作業の大切さを再認識した」といった前向きな声が多数寄せられました。この研修を通じ、危険に対する「感受性」を高めることが、結果として無事故・無災害の活動につながるという意識が、全体にしっかりと芽生えたと感じています。

地域住民の生命と財産を守るためには、まず消防団員1人1人が無事に作業を終え、家族の元へ帰ることが大前提です。今回の研修成果を一過性のものとせず、日頃の訓練や点検の場にもS-KYTの視点を定着させ、高い意識を組織の糧とし、今後も安全で強い消防団づくりを目指した活動を希望いたします。
結びに、講師として熱心に御指導してくださった瀧澤親男指導員、剣持孝弘指導員、小谷正利指導員に感謝申し上げます。
